高齢者虐待防止措置未実施減算はいくら?対象・経過措置・避け方をまとめて解説
更新日:2026-07-22・約5分で読めます
令和6年度改定で新設された高齢者虐待防止措置未実施減算は、所定単位数の1%です。「虐待が起きたら」ではなく「措置を講じていなければ」適用される点が誤解されやすいポイント。減算額・対象サービス・福祉用具貸与の経過措置・減算を避けるために必要な措置の中身を、一次資料の裏取り範囲でまとめます。
まず結論:減算は「虐待の発生」ではなく「措置の未実施」に適用
令和6年(2024年)4月、介護報酬改定で「高齢者虐待防止措置未実施減算」が新設されました。名称から「虐待や身体拘束が実際に発生した事業所が減算される」と誤解されがちですが、正しくは「虐待防止のための措置を講じていない事業所」が対象です。措置を適切に講じていれば、この減算の対象にはなりません。
ここでいう「措置」とは、委員会の設置・指針の整備・研修の実施・担当者の配置という4点セットを指します。この記事では、減算の金額・対象サービス・経過措置と、減算を避けるために必要な措置の全体像を整理します(研修そのものの頻度・進め方は別記事「介護の虐待防止研修は何をすればいい?」で解説しています)。
減算額はいくら?——所定単位数の1%(令和6年4月新設)
高齢者虐待防止措置未実施減算の減算率は、所定単位数の1%です。令和6年度介護報酬改定で新設されました。
対象サービスと、福祉用具貸与だけにある経過措置
対象は、居宅療養管理指導・特定福祉用具販売を除く、ほぼ全サービスです。
福祉用具貸与だけは3年間の経過措置が設けられており、適用開始は令和9年4月になる見込みです。ただし、この適用開始日を定めた告示の原文そのものは本サイトでは未確認のため、正確な時期は指定権者(都道府県・市区町村等)にご確認ください。
なお、「福祉用具貸与・居宅療養管理指導は虐待防止の措置(委員会・指針・研修・担当者)そのものが令和6年度から新たに義務化された」という理解は誤りです。措置の義務自体は令和3年度から全サービス共通で、令和6年度に新設されたのは減算という仕組みのほうです。
減算を避けるために必要な「4点セット」
減算の判定基準は「措置」の有無です。措置とは、次の4点セットを指します。
- 委員会:虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、結果を職員に周知する。
- 指針:虐待の防止のための指針を整備する。
- 研修:指針にもとづき、職員に対して定期的に研修を実施する(頻度はサービス類型により年1回以上、施設・居住系は年2回以上。いずれの類型も新規採用時には必ず実施)。
- 担当者:虐待防止の措置を適切に実施するための担当者を配置する。
運営指導で確認されるのは「記録」——実施していても証拠がなければ未実施扱いに
運営指導(実地指導)では、委員会の議事録、指針の文書、研修の実施記録、担当者を定めた文書など、4点セットそれぞれについて「実施した記録」の有無が確認されます。取り組んでいても記録が残っていなければ実施を説明しづらく、指摘や減算のリスクにつながりかねません。研修だけを実施していても、委員会・指針・担当者のいずれかが欠けていれば、措置全体としては未実施とみなされるおそれがあります。
委員会の議事録・指針の文書は事業所ごとの運用に委ねられていますが、研修についてはレジュメ・実施記録・出席簿・確認テストの結果をそろえておくと、いつ・誰が・何を実施したかを説明しやすくなります。
他の減算とくらべると:率も対象範囲も別基準
高齢者虐待防止措置未実施減算(1%)は、身体拘束やBCPの減算とよく混同されますが、率も対象範囲も別々の基準で決まっています。身体拘束廃止未実施減算は施設・居住系で1日につき所定単位数の10%、短期入所系・多機能系で1%(令和7年4月から)。業務継続計画未策定減算は施設・居住系で3%、その他で1%です。いずれも「発生の有無」ではなく「措置・計画そのものの未実施」に対して適用される点は共通しています(各減算の詳しい対象・経過措置は「介護の研修関連 減算 早見表」でまとめて比較しています)。
なお、感染症の予防・まん延防止のための研修・訓練には、虐待防止のような「未実施減算」という名称の報酬減算は設定されていません。研修・訓練を実施しないこと自体は運営基準違反として運営指導・監査の対象になりますが、単位数を直接減らす仕組みではない点が、虐待防止・身体拘束・BCPとは異なります。
サービス類型別に見る「措置」の頻度一覧
減算を避けるために必要な研修の頻度は、施設・居住系(介護保険施設・特定施設・認知症GH)が年2回以上+新規採用時、それ以外(通所系・訪問系・居宅介護支援・福祉用具貸与・短期入所系・多機能系)が年1回以上+新規採用時です。委員会・指針の整備・担当者の配置という残り3点は、頻度の規定こそ「定期的」とされているものの、どの類型でも義務であることに変わりはありません。
つまずきどころ:委員会を「開催した」ことをどう証明するか
運営指導で確認されるのは記録です。委員会は開催した日時・出席者・検討内容を議事録として残し、指針は整備した文書そのものを保管し、担当者は配置を定めた辞令や体制図などの文書を残しておくと、「措置を講じている」ことを説明しやすくなります。研修についても、レジュメ・実施記録・出席簿・確認テストの結果を一組でそろえておくのが基本です。4点セットのうち一つでも記録が欠けると、実施していても「未実施」とみなされるおそれがある点は、この記事の前半で述べたとおりです。
無料で使える虐待防止研修のレジュメ・確認テスト・記録様式
本サイトの「高齢者虐待防止研修キット」には、そのまま読み上げて実施できるレジュメ、確認テスト10問(解答・解説つき)、実施記録様式、出席簿がそろっています。登録不要・無料で、入力内容はお使いのブラウザ内にのみ保存され、外部には送信されません(zero-retention)。委員会の議事録・指針の整備とあわせて、4点セット全体の記録を整理する際にお使いください。
法令・介護報酬は改定されます(本記事は2026年7月時点)。最終的な適用は指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へご確認ください。
出典(一次資料)
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、提供者は責任を負いかねます。